2017年6月18日日曜日

アマゾンはどこに行こうとしているのか

アマゾンがウォルマートをのり越えようとしている。
 店舗といえば店舗だが、一体、どのようなものになるのか—想像もつかない。

 まず、アマゾンが高級スーパーを買収した記事から。

 ネット小売り最大手のアマゾン・ドット・コムが、米高級食品スーパーのホールフーズ・マーケットの買収を決めた。
 生鮮品分野に店舗網を含めた足場をつくり、既存スーパーの牙城切り崩しを狙う。
 急拡大するアマゾンにウォルマート・ストアーズなど企業はネット事業の強化を打ち出すが、決め手に欠く。
 今回、アマゾンが買収につき込む額は同社として過去最大の137億ドル(約1兆5000億円)。
 米国、カナダ、英国にある460もの店舗をまとめて手にし、全米で7000億~8000億ドルあるといわれる生鮮品市場を掘り下げる。

 アマゾンは2007年から「アマゾン・フレッシュ」と名付けた生鮮品の当日宅配を始めているものの、有力事業には育つていない。
 鮮度管理や在庫調整で他の物販より複雑なノウハウが求められ、食の安全など信頼性が顧客獲得に不可欠だからだ。
 全米に仕入れルートを持ち、高級スーパーとしてブランドカの高いホールフーズは市場への入り口としては最適。

 「アマゾンにとってホームラン級の買収」との声は流通専門家の中で多い。
 アマゾンは今後、ホールフーズの生鮮品を宅配、自社の食品をホールフーズの店舗を通じて売ったりすることが可能になる。
 日持ちしない生鮮品は商品廃棄を極力減らして利益率を高められるかが課題で、「アマゾンは人工知能(AI)を用いたデータ活用技術でこれを解決する」との指摘もある。

 影響が大きいのが売上高の半分近くを生鮮品や食品に頼るウォルマートだ。
 同社は店舗の強みとして「フレッシュネス(鮮度)」を掲げてきた。
 14年からネットで注文した生鮮食品をその日に最寄りの店舗で受け取れる事業を進めているが、底流にはアマゾンとの差別化がある。

 今後、アマゾンが生鮮品の分野でも主導権を握ると、既存のスーパーは独自色を出しにくくなる。
 この日の終値でウオルマート株は4・65%下落。
 一方、アマゾンは2・44%上げた。

 アマゾン対策としてウォルマートは16年に新興ネット通販ジェット・ドット・コムを30億ドルで買収。
 男性向け衣料品ネット販売のボノボスを3億1000万ドルで買収すると発表した。
 ネットと品ぞろえの強化は各社に通じる課題だが、対応できる企業には限りがある。
 アマゾンの膨張スピードに各社がどこまで耐えられるか。
 持久戦の先には再編が待っている。

補足、感想など

 日本でいえばどんな感じかな。
 楽天が、高島屋を買収した—てな感じだろうか。
 こう考えれば、大きな地殻変動が起きているという感じだなぁ。

 アマゾンで検索してみると分かるように、アマゾンで色んな商品をクリックすると、それが個人情報と共に残っているのだ。
 つまり、アマゾンという会社は世界中から、個人がなにを欲しがっているか、なにに興味があるか—という情報を集めているのだ。
 そういう会社が店舗を押さえるという意味で怖いというか、不気味な存在ではある。

 アマゾンを特集した記事があったので、それを抜粋したい。

 --ここから--

 株式上場から20年を迎え、アマゾン・ドット・コムの株価が1000ドルを突破。
 アップル、アルファベット(グーグル)、マイクロソフト、フェイスブックとともに時価総額の世界トップ5に名を連ねる。
 2016年の純利益は24億ドル (約2600億円)と他の4社より1桁小さい。
 にもかかわらず株価で伍(ご)しているのは、将来への期待が大きいからだ。

 潜在力は本物か。本拠地のワシントン州シアトルを訪ねた。
 まず向かったのは「フルフィルメントセンター(FC)」。
 ネッ上通販の商品を蓄え、顧客に発送する倉庫だ。
 14年の開設で、家電や日用品などかさばる商品を扱う。
 アメフトの競技場28個分と広い。

 1千人以上が働くが、欠かせないのが数百台のロボットだ。
 商品が積まれた棚を必要な時、必要な場所に自動で運ぶ。
 従業員は、倉庫内を歩き回らずにすむ。
 自動化されたFCは世界に25あり、計8万台のロボットが稼働。
 人と機械のコラボで大量の商品をさばき、通販の「早い・安い」を支える。

 規模の経済を生かすのは、クラウドサービスも同じ。
 世界にデータセンターを設け、企業や公的機関といった顧客にネットでITを届ける。
 16年の売上高は120億ドルを超えた。

 巨大でも、鈍重ではいけない。
 創業者のジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)は、株主にあてた手紙にこう晝いた。
 「大組織の内部に、どうデーワン(1日目)の活力を保つか」。
 その姿勢は原点の書籍販売によく表れている。
 膨大な品ぞろえができるネット書店を開いたのは1995年。
 07年には電子書籍端末を開発し、60秒で好きな本が手に入るしくみをつくった。

 デジタル技術で出版業界の風景を一変させたが、アマゾンは止まらない。
 今度はリアル書店。ネットで得たデータをもとに厳選した本を売る。
 1号店はシアトルにある。
 音楽が静かに流れる店内では、表紙が見えるよう本が並ぶ。
 場所をとるが、顧客に本との触れ合いを促す工夫という。

 90年代半ば、起業家たちがアイデアを競うフロンティアはネット空間だった。
 いま、lOTやビッグデータなどの技術が進化し、腕をふるえる領域はリアル空間へと広かっている。

 「顧客の期待はどんどん高まる。驚かせる発明を続けなければならない」
 14年に売り出した「エコー」。話しかけて操作する人工知能(AI)スピーカーだ。
 成長市場と見込まれ、アップルも年内に追随する。
 「音声操作は大きく育つ。アマゾンが競争をけん引している」。
 エコーで使えるソフトを開発する技術者、エリック・オルソン氏は興奮する。

 もちろんアマゾンも壁にぶつかる。
 日木では通販の荷物急増と人手不足が重なり、宅配サービスの維持に支障をきたす。

 ライバルも強力だ。マイクロソフト。
 ソフトの巨人としてパソコン産業に君臨したのも今は昔で、足元ではハード分野を攻める。
 メガネ型機器を編み出し、働き方改革の道具として企業に売り込む。
 アルファベットは自動運転のほかITを駆使した医療を手がける。
 フェイスブックも、頭に思い浮かべるだけで文章を入力できるコンピューターシステムの研究に着手。

 型破りな発想はアマゾンの専売特許とはいえないが、ネットとリアルをまたにかけて事業革新をもくろむ「融通むげさ」は目を引く。
 世界ではITトップ5への風当たりが強い。
 膨大な顧客データを握るなどして勢いづく姿に規制当局が目を光らす。
 「競争を阻害する」と事業モデルやビジネス慣行に注文をつける例も目立つ。
 確かに、社会との共生なしに、長期の成長は望めない。

 解はあるか。
 アマゾンの本社があり、従業員3万人が働くシアトル中心部を歩いてみる。
 すでに30のアマゾンビルが立ち並ぶ。
 通りに面した一等地にはレストランやコーヒー店が入居し、にぎわっている。
 地元企業をテナントとして招き入れ、その商売を側面支援しているのだという。
 「従業員が仕事に励む場所だけでなく、活気あるコミュニティーをつくる」と副社長。

 自社の繁栄を地域と分け合い、社会を置き去りにしない取り組みは、ライバルより一歩踏み込んでいるようにみえる。
 もはやアマゾンを小売業者やネット大手と呼んでもピンとこない。
 名づけるなら「実験会社」か。
 斬新な試みを絶やさない経営。それが時代を味方につける条件だ。

 --ここまで--

 しかし、見事にアメリカに集中したなぁ。
 なぜなのだろう。